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COLUMN – 荒野を目指そう!

 

daft, INDIAN CREW として全国的に活躍する、東海地区を代表するHIPHOPダンサー『UC』による SOUL CITY NAGOYA COLUMN 第十弾!

 

 


 

どうもです。UCです。

 

年度末ですね。不安定なご時世ではありますが、振り回されることなくまずは自分見つめて、目標や世間や仕事やダンスとの距離感見極めて、ひとつずつ進んで行きたいですね。

 

さて、今日はみんなに倣って、好きな音楽など紹介しようと思いましたが、以前も古めのアングラHIPHOP紹介した際に、あまりみんなに響かなかったのを思い出しまして笑、今日は僕のちょっとした趣味・読書からオススメの本を紹介しようと思います。

 

まぁ言うほどの読書家ではないんですが、高校や大学の頃は純文学の小説や自伝、ノンフィクションものを好んで読んでました。直木賞よりは芥川賞受賞作品が好きな感じですかね。

 

太宰治、芥川龍之介はやっぱり今読んでもひんやりするほど感覚鋭いし、夏目漱石や三島由紀夫、遠藤周作なんかも、ほんとスッと入ってくる文章書くなと時間忘れて読んでしまいますね。

 

逆に就職してからは本読む時間もなく、めっきり読書から遠ざかってしまい、新しい話題作もほとんど読めずにいますが、最近また時間を見つけては読むようにしています。

そんなわけで、今日紹介したい小説はこちら。

 

 

「青年は荒野をめざす」五木寛之(文春文庫)

『ぼくらにとって音楽とは何か? セックスとは? 人間とは? そして放浪とは?
燃焼する人生を求めてペット一挺はてしなき荒野をめざす青年ジュンの痛快無類のヨーロッパ冒険旅行!』

 

というわけで、20歳の主人公ジュンが、トランペット一本持って、ヨーロッパを放浪する物語です。

ジュンはJAZZプレイヤーで、高校生の頃からJAZZ喫茶で演奏もし、演奏スキルにもある程度自信のある青年。

そんな彼が放浪の旅を決意したきっかけが、高校三年生の時に、演奏するJAZZ喫茶のマスターに言われた言葉でして。

「お前さんには何か欠けているものがある」

マスター曰く、「才能は大したもんさ。テクだって凄い。何しろ基礎からみっちり叩き込んでるからな。だが…何かが足りんということは確かだ。」マスターの言葉にふてくされるジュンに対して、喫茶で働くミニ女史と常連客“プロフェッサー”が彼にこう言葉をかけます。

 

ミニ女史「あなたのジャズは種類が違うのよ。竜ちゃんたち(ジュンの演奏仲間)の音は、濁っているの。人間のいやらしさや、馬鹿さかげんや、憎しみや、くやしさや、そんなものがどろどろになって内にこもってる音よ。だからいいの。あんたのは、そうじゃない。音がきれい過ぎて、こっちに共鳴させるものがないわ。鑑賞用演奏なのよ。」

 

プロフェッサー「(君の演奏には)スイングがないのだろう。スイングとは何か。それはアンビバレンツの美学である。アンビバレンツ、つまり二つの対立する感情が同時に緊張を保って感覚されるような状態の中で、激しく燃焼する生命力がスイングだ。愛と憎悪、絶望と希望、転落感と高揚感、瞬間と永遠、記憶と幻想、それらがスパークする所にスイングが生まれる。」

 

そして、最後にジュンはこう言われます。「あんたは苦労がたりんのだよ。」

これを受けて、彼は放浪の旅を決意し、高校卒業して、バイトして貯金を貯めて1年後に旅へと出て物語が始まるわけですが、僕的にはこの冒頭のくだりだけで十分に満足してしまうほど、ガツンとやられましたね!

 

女史も、プロフェッサーも深い!

とにかく、理屈じゃなく共感できるというか、こう込み上げてくるものがありますね!

この小説はJAZZのことだけど、これはHIPHOPに当てはめても同じだなと思いますね!まぁJAZZからの派生みたいな部分もあるから、似ていて当然なんですが。

 

音楽も、芸術であり、表現。
ヒトに何かを伝えようとすることこそ芸術だと思うし、ヒトが対象ということは、やはりヒトの感情に訴えかけてこそだし、その感情って決してキレイなものだけではないし、理屈や理論だけではないなと思うので、やはり、カタチだけ表面だけではほんとに伝わらないし、感情揺さぶることは出来ないですよね。

 

HIPHOPのパワーの根底には反骨精神があると思うし、歴史を紐解けば、人種差別や格差社会などに目を向け理解しなければいけないし、HIPHOPがポジティブなパワーを持っている分、スタートは負から産まれているというか、負を知っているからこそ、輝くエナジーみたいなものが魅力なんだと改めて感じられました。

 

そういった部分で、僕もこの主人公ジュンと同じで、どちらかといえば苦労を知らない人間でした。表面的には。家庭環境も悪くなく、周りの人間にも恵まれ、学校や仕事に恵まれ、ぬくぬくと生きてきたので。

そんな自分がHIPHOPだ、ストリートダンスだと、表現していることにある種のコンプレックスをずっと感じている部分が昔は心のどこかでありました。

 

だから、込み上げる想いの中、自分自身にも逆に自信をなくしそうにもなりましたが、
苦労が足りないと言われたジュンが、「幸福な人間にはジャズはやれんというわけですか?」

と反論したところに、プロフェッサーが答えた言葉にさらにやられまして。

 

「必ずしもそうじゃない。だが、ジャズは、ハングリー・アートなんだ。不幸でなくてもいいから、不幸のなんたるかを実感をもってわかる人間じゃないといかん。」

「不幸を持たぬ不幸というものもある。」

 

プロフェッサー!かっこよすぎます!笑

 

立場、環境、思考や思想、人それぞれですが、人それぞれに悩みも、苦しみも、悲しみもあって、でもそれは誰かと比べることじゃなくて、ひとりひとりが自分自身と向き合って、飛び込んで、もがき苦しんで、成長する中で自分だけのスイングをしていくべきなんだなと。

 

自分のコンプレックスが小さく思えた言葉でした。

自分をさらけ出し、良い部分も悪い部分もつまらない部分もすべてを自分自身というフィルターを通して表現していきたいなと思えました。

醜悪の美
てのもありますからね。

 

そんなわけで、そこから始まるジュンの放浪はほんとに刺激的で、濃厚で、男の子ならきっと旅しに出たくなると思います!w

 

まぁこれは小説なんで、びっくりするくらいいろんな出来事に巻き込まれていきます笑
コナンが歩けば殺人現場に出くわす様なもんですねw

 

実際はここまでのこと起きないことが多いかもしれませんが、その日その時流れる時間をいかに意味あるものにできるかどうかだと思いますし、何にせよ、やっぱり旅っていいですね!!

 

旅するとダンスうまくなるよ。
でも、旅行じゃうまくならないよ。

 

とある先輩に言われましたが、それも少し納得できます!

 

40年も前の小説ですが、それでも海外という未知の領域にノープランでつっこんでいくサマは、今でも新鮮でワクワクしてしまいます!

ぜひ読んでみてください(^^)

 

最後に、
プロフェッサーの言葉をもうひとつだけ添えさせていただきます。

 

「人生は何度でも新しくなる。青春は、その人の気持ちの持ちようで、何回でも訪れてくれるんだよ」

 

皆さん、荒野を目指しましょう!!w
そんなわけで、
オススメの小説紹介でした。